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東京高等裁判所 平成11年(ラ)2359号 決定 1999年12月08日

抗告人

株式会社整理回収機構

代表者代表取締役

代理人支配人

主文

本件執行抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

本件執行抗告の理由は,別紙「抗告の理由」に記載のとおりであるが,要するに,原審が,民事執行法68条の3第3項に基づき,本件不動産についてした競売手続取消決定は,違法なものであるから取り消されるべきであるというにあるものと解される。

よって,案ずるに,民事執行法68条の3第1項は,執行裁判所は,入札等の方法による売却を3回実施させても買受けの申出がなかった場合において,不動産の形状,用途,法令による利用の規制その他の事情を考慮して,更に売却を実施させても売却の見込みがないと認めるときは,強制競売の手続を停止することができ,この場合においては,差押債権者に対し,その旨を通知しなければならないことを,同第2項は,差押債権者が前項の規定による通知を受けた日から3月以内に買受けの申出をしようとする者があることを理由として,売却を実施させるべき旨を申し出たときは,執行裁判所は,売却を実施させなければならないことを,同第3項は,差押債権者が前項の期間内に同項の規定による売却実施の申出をしないときは,執行裁判所は,強制競売の手続を取り消すことができ,同項の規定により売却を実施させた場合において買受の申出がなかったときも,同様とすることを定め,同法188条は,これを不動産競売について準用することを定めているところ,一件記録によれば,東京地方裁判所は,本件につき平成4年に不動産競売手続の開始決定をしてから,平成5年,平成6年,平成7年,平成9年,平成10年の5回にわたって期間入札の方法による売却を実施させたが,いずれにおいても買受けの申出がなかったこと,そこで,同裁判所は,以上のような経過等本件の諸般の事情を考慮して更に売却を実施させても売却の見込みがないと認めて,民事執行法68条の3第1項に基づき,本件不動産競売手続の停止決定をし,差押債権者承継人である株式会社住宅金融債権管理機構に対しその旨通知したこと,同社は,同第2項に基づき,所定の期間内に,同裁判所に買受けの申出をしようとする者があることを理由として売却の実施を申し出たこと,これを受けて,同裁判所は,平成11年7月に期間入札の方法による売却を実施させたが,やはり,買受けの申出がなかったこと,そこで,同裁判所は,同第3項に基づき,本件不動産についてした本件不動産競売手続を取り消す旨の本件決定をしたことが認められ,上記事実によれば,本件決定は,民事執行法63条の3に則って適法にされたものであって,これを違法として取り消すべき事由はないものというべきである。

よって,本件執行抗告は理由がないから,主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 伊藤瑩子 裁判官 鈴木敏之 裁判官 橋本昇二)

別紙 抗告の理由<省略>

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